シノビは影とも渾名される、東国の歴史を裏から支えてきた存在である。特に斥候となり、時に密偵となり、時には暗殺者として、人知れず密やかに歴史を動かして来たのは彼らであった。
　彼らの多くはシノビの里で生まれ育ち、幼い頃から修行を詰み、特定の主君にのみ生涯仕えるのが常である。同じ里に住む一族同士にも厳格な上下関係があり、私心を挟まず主命を遂行する事、そのための技を磨く事に一生を費やす者が一般的なシノビの姿である。
　シノビでありながら冒険者に身をやつす者は、何らかの密命を受けて一時的に冒険者の身分にいる者が大半であると言える。なぜならば、シノビの身でありながら里を抜け出して自由を得られる者などほとんどいないからだ。裏切るなかれ、とのシノビの掟はそれほどに重いのである。
　しかし近年では、シノビの存在が冒険者として世の表に出始めた事から、シノビの生まれでなくともその技を人伝てに覚えた者が散見される。冒険者としてのシノビには、こういった経緯で技を身につけた者も少なからず存在している。