かつてこの世界は、栄華を極めた文明がその主であった。人類の叡智がもたらした万能の力は地水火風を操り、万物と森羅万象をその支配下に置いているも同然であったと云う。
　しかし、原因こそ判然としていないが、かの時代の栄華と叡智は既に失われて久しい。かつては世界のありようをも思うがままに操作していたと言われる偉大なる叡智の力も、今となっては書物の中にその断片が見られるのみである。
　この時代にアルケミストと呼ばれる者たちは、今では錬金術と呼ばれている過去の叡智を現世に復活させるべく研究を重ねている学士たちである。彼らの多くは何らかの機関に所属するか、あるいは独自の研究所を構え、後援者を得て、時には失敗を重ねながらも過去の技術と知識の復刻のために研究三昧の日々を送っているものだというのが世間一般に認知されている姿である。
　しかし、中には冒険者としての道を選ぶ異端の学士もいる。彼らは錬金術の起動装置を手甲などの装身具に備え、炎氷雷を操って怪物を薙ぎ払う攻撃手となる。なにゆえそのような道を選んだかは個々人の思惑によるが、研究の資金を得るため、あるいは後援者を探すため一時的に身をやつしているか、あるいは実戦の中から学び取る何かを求めているのであろう。